COVID-19流行期の川崎病類似疾患の臨床的特徴は?
2020/08/24
そもそも川崎病はどんな病気?
1967年に川崎富作博士が、手足の指先から皮膚がむける症状を伴う小児の「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」として発表された症候群が、新しい病気であることがわかり、博士の名前をとって川崎病という病名になりました。
この病気は世界各地で報告されていて、とくに日本人、日系アメリカ人、韓国人などアジア系の人々に多くみられます。開発途上国ではまれです。
原因はまだはっきりしていませんが、ウイルスや細菌に感染したのをきっかけにそれを防ごうとする免疫反応がおこり、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないかと考えられています。
血液の中には白血球という体を守る働きをする細胞があります。細菌などが侵入すると、それが刺激になって白血球が増え、血管の壁(血管壁)に集まってきます。この状態が血管炎で、炎症が強すぎると白血球から出る酵素によって血管壁は傷んでしまいます。もともとは細菌などの侵入に対応して体を守るための反応なのに、反応が大きすぎる場合、自分自身の組織が破壊されてしまうことになるのです。
赤ちゃんまで心筋梗塞に
心臓を養っている冠状動脈(冠動脈)の血管壁の構造が、この反応によって破壊されてもろくなり、もろくなった部分が拡大して瘤(こぶ)となることがあります。これが川崎病による冠動脈障害で、後遺症と呼ばれています。注意してほしいのは、冠動脈障害が原因になって、この動脈がつまり、心筋梗塞がおこる場合があることです。心筋梗塞は動脈硬化からくる成人病(生活習慣病)ですが、こどもでも川崎病による冠動脈障害が原因となっておこる場合があるのです。
全国調査では1982年と1986年の流行をのぞき、1980年代後半から90年代は毎年6,000人ぐらいのこどもがかかっていました。99年に7,000人、2000年には8,000人としだいに増える傾向にあります。1歳をピークとして、主に4歳以下の乳幼児がかかり、男子が女子の約1.5倍です。冠動脈に大きなこぶができる巨大瘤(冠動脈径8ミリ以上)をもつ患者が毎年約0.5%、200人に1人います。川崎病による死亡率は、最近では約0.05%、2,000人に1人となっています。
川崎病は2つの疾患をもっています。急性熱性疾患(急性期)と冠動脈障害を主とした心疾患(後遺症)です。まず急性期について説明しましょう。
急性期の症状は
この病気は特徴的な症状から診断します。次にあげる6つの主な症状のうち、5つ以上がみられた場合と、4つの症状しかなくても冠動脈瘤がみられた場合は川崎病(定型の川崎病)と診断します。症状はそろわないものの、他の病気ではないと判断された場合は「非定型の川崎病」とされています。
主な症状は
・5日以上続く発熱(38度以上)
・発疹
・両方の目が赤くなる(両側眼球結膜充血)
・唇が赤くなったり、苺舌がみられる
・病気の初期に手足がはれたり、手のひらや足底が赤くなったりする
(熱が下がってから、手足の指先から皮膚がむける膜様落屑(まくようらくせつ)がある)
・片側の首のリンパ節がはれる
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生率が高い地域では、通常とは異なる発熱や炎症の症候群を呈する子供の症例が報告されています。
英国の研究で、新型コロナウイルス感染症流行期の川崎病類似疾患入院患児の調査を行い、発熱や炎症から心筋障害、ショック、冠動脈瘤の発現まで、さまざまな徴候や症状とともに、重症度にも違いがみられることが明らかになりました。
新型コロナ流行後の臨床的特徴を抽出し、流行前の川崎病と比較したところ、今までの症例と比較して、今回の川崎病類似疾患患児の特徴は・・・
・新型コロナウイルス感染率が78%と高く、発症の引き金となったと考えられた。
・通常川崎病は4-5歳未満の発症が多いが、新型コロナウイルス感染症流行期の川崎病類似疾患発症年齢が高かった(年齢中央値が9歳)
・血液検査での炎症数値が高かった
という特徴がありました。
新型コロナウイルス感染症流行期の川崎病類似疾患は重症で、50%で血圧低下(ショック)を来し、強心薬および蘇生輸液を要した。その内、79%で人工呼吸器が必要でした。
(川崎病の合併症である)冠動脈拡張と冠動脈瘤も多く、14%で発現しました。
ちなみに現在のところ日本では新型コロナと川崎病の関係は認められていません。
記事監修
- 日本小児科学会認定小児科専門医
- すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)
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