COVID-19食い止めにT細胞が貢献?抗体検査のみでは感染者数過小評価の恐れ

2020/08/21

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体は検出されずともT細胞は検出される場合があり、抗体検査だけではその感染(COVID-19)者数を少なく見積もってしまう恐れがあります。また、新型コロナウイルスへの曝露があっても軽症か発症しないケースではT細胞が貢

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体は検出されずともT細胞は検出される場合があり、抗体検査だけではその感染(COVID-19)者数を少なく見積もってしまう恐れがあります。また、新型コロナウイルスへの曝露があっても軽症か発症しないケースではT細胞が貢献しているかもしれません。

フランスの7家族を調べた試験の結果、新型コロナウイルス感染者と密に接したその家族8人のうち6人からは新型コロナウイルスへのT細胞が検出されましたが抗体は見つかりませんでした。

スウェーデンの約200例を調べた試験では無症状か軽症の新型コロナウイルス感染者のほとんどから強いメモリーT細胞反応が検出され、それらのT細胞反応獲得者に抗体反応が欠如していることは稀ではありませんでした。

新型コロナウイルスに曝露か感染すれば抗体がどうあれ重度COVID-19を防げるようになる可能性があるようです。

また、メモリーT細胞反応は抗体反応より2倍多く認められ、抗体検査頼りだと新型コロナウイルスに対抗する免疫がどれだけ広まっているかを少なく見積もってしまうようです。

新型コロナウイルスへのT細胞反応は風邪症状を引き起こす別のコロナウイルスへの感染によって備わるらしいことも示されています。

目下のCOVID-19流行からだいぶ前の2015~18年に採取されて保管されていた血液検体を調べたところ約半数に新型コロナウイルスを認識するヘルパーT細胞が備わっていました。風邪を引き起こす4つのヒトコロナウイルスのいずれかに感染したことで新型コロナウイルスも認識しうるT細胞が発生したのだろうとフランスの研究チームは考えています。

そのチームはCOVID-19から回復した10人の全員から新型コロナウイルススパイクタンパク質を認識するヘルパーT細胞が検出されたことも併せて報告しています。また、スパイクタンパク質以外のタンパク質に反応するヘルパーT細胞も検出されました。

現在開発中のワクチンのほとんどはスパイクタンパク質への免疫反応を誘発することを目指しています。しかしもっと欲張った方が良さそうです。他のタンパク質に反応するヘルパーT細胞が今回確認されたことから察するに、それらのタンパク質へも免疫系を駆り立てるワクチンはいっそう有効かもしれません。1つのタンパク質だけにぞっこんにならない方が良いと話しています。

記事監修

日本小児科学会認定小児科専門医
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)