エリスロマイシンが炎症を抑える物質を誘導し、肺炎と歯周炎を制御

    2020/08/26

    マクロライド系抗菌薬がどのように炎症抑制作用を発揮しているのかを明らかに

    新潟大学は2020年8月7日、抗生物質の1つであるマクロライド系抗菌薬・エリスロマイシンが、抗炎症作用をもつ物質を体内で誘導し、肺炎と歯周炎を制御することを明らかにしたと発表した。

    マクロライド系抗菌薬の1つであるエリスロマイシンは、抗菌作用とともに免疫の調整や炎症を抑える作用を持つとされており、肺炎や歯周炎などの粘膜疾患治療に対して頻用されている。

    また、新型肺炎(COVID-19)においてもマクロライド系抗菌薬の効果を示した臨床報告がいくつかなされている。

    しかし、マクロライド系抗菌薬がどのように炎症抑制作用を発揮しているのかは不明な点が多く、頻用による抗生物質が効きにくい耐性菌の増加が問題となっていた。

    誘導される体内物質は、好中球を制御することで炎症を抑える機能を持つ分子。

    研究グループはこれまでに、肺炎や歯周炎の共通な病態増悪因子が好中球であることを明らかにしている。

    そこで今回、エリスロマイシンが肺および歯肉で物質を誘導し、炎症を抑えているのではないかと考え、研究を行った。

    致死性肺炎のマウスにエリスロマイシンを投与、適切な濃度の5分の1で生存率上昇

    肺炎を実験的に起こしたマウスにエリスロマイシンを投与すると、エリスロマイシン投与群では物質の産生が認められるとともに、好中球の減少および肺胞の形態維持が認められた。

    さらに、マウスに致死性の肺炎を起こしたモデルにおいては、エリスロマイシン投与により生存率が上昇することが明らかになった。

    生存率維持に必要な濃度は、抗菌薬として適切な濃度のおおよそ5分の1であることもあわせて示された。

    続いて、歯周炎を引き起こしたマウスにエリスロマイシンを投与した結果、歯肉の炎症が抑えられていた。

    歯周炎は、歯を支える骨も溶かすことで歯を失う原因となるが、エリスロマイシンは骨の吸収も抑制していたという。

    さらに、歯肉と骨を詳しく調べてみると、歯のまわりの靭帯である歯根膜に、物質の産生と好中球の減少が認められた。

    さらに、これらの炎症抑制作用がエリスロマイシンによる体内物質誘導によって発揮されているものなのかを検討するために、体内物質を産生しない体内物質欠損マウスを用いて同様な実験を行った。

    すると、体内物質欠損マウスでは、エリスロマイシンによる肺炎や歯周炎を抑える効果が認められなかった。

    また、体内物質欠損マウスに作製した体内物質を接種すると、炎症抑制効果が発揮されることが明らかになった。つまり、エリスロマイシンは体内物質を生体内に誘導することで、好中球を主体とした炎症を抑えていることが示された。

    体内物質誘導による炎症抑制作用のみを有する新規薬剤の開発にも期待

    続いて、どのようにエリスロマイシンが細胞に作用して体内物質を誘導しているのかを調べました。これまでに体内物質の誘導物質として、オメガ3脂肪酸のレゾルビンおよびステロイドホルモンであるDHEAが同定されており、経路も明らかとなっていた。

    しかし、エリスロマイシンがもつ体内物質誘導能は、これらより約3倍強いものであったため、異なる体内物質誘導経路の可能性があると考えた。

    そこで研究グループが、血管内皮細胞のエリスロマイシン作用候補受容体を網羅的に検索したところ、エリスロマイシンは、ある受容体に作用することを新規に見出した。その受容体の作用により体内物質の産生を誘導していることが明らかになったという。

    回の研究により、エリスロマイシンの免疫調節作用や、炎症を抑制する新たなメカニズムが解明された。

    この成果は、抗炎症作用を期待したエリスロマイシンの使用に関しての治療エビデンスを提供することとなり、今後は免疫炎症作用のみを誘導できる適正な濃度使用によって、耐性菌の減少につながることが期待される。

    研究グループは、「本研究における体内物質誘導機構の解明により、体内物質誘導による炎症抑制作用のみを有する新規薬剤の開発につながることもあわせて期待される」と、述べている。

    記事監修

    日本小児科学会認定小児科専門医
    すずきこどもクリニック
    鈴木幹啓(すずきみきひろ)