川崎病とはどんな病気?

2020/08/26

1967年に川崎富作博士が、手足の指先から皮膚がむける症状を伴う小児の「急性熱性皮膚粘膜りんぱ腺症候群」として発表された症候群が、新しい病気であることがわかり、博士の名前をとって川崎病という病名になりました。

この病気は世界各地で報告されていて、とくに日本人、日系アメリカ人、韓国人などアジア系の人々に多くみられます。開発途上国ではまれです。

原因はまだはっきりしていませんが、ウイルスや細菌に感染したのをきっかけにそれを防ごうとする免疫反応がおこり、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないかと考えられています。

血液の中には白血球という体を守る働きをする細胞があります。細菌などが侵入すると、それが刺激になって白血球が増え、血管の壁(血管壁)に集まってきます。この状態が血管炎で、炎症が強すぎると白血球から出る酵素によって血管壁は傷んでしまいます。もともとは細菌などの侵入に対応して体を守るための反応なのに、反応が大きすぎる場合、自分自身の組織が破壊されてしまうことになるのです。

赤ちゃんまで心筋梗塞に
心臓を養っている冠状動脈(冠動脈)の血管壁の構造が、この反応によって破壊されてもろくなり、もろくなった部分が拡大して瘤(こぶ)となることがあります。これが川崎病による冠動脈障害で、後遺症と呼ばれています。注意してほしいのは、冠動脈障害が原因になって、この動脈がつまり、心筋梗塞がおこる場合があることです。心筋梗塞は動脈硬化からくる成人病(生活習慣病)ですが、こどもでも川崎病による冠動脈障害が原因となっておこる場合があるのです。

麻疹(はしか)、風疹は一度かかると抗体(そのウイルスを防ぐたんぱく)ができ、二度感染することはありません。しかし、川崎病の場合はかかった子の2~3%に再発がみられます。うつる病気ではありませんが、兄弟でかかる場合が1~2%あります。

川崎病にかかるかどうかは体質によるのではないかと考えられています。体質は遺伝子によって決まり、環境によって影響をうけます。いま、この病気のかかりやすさに関係する遺伝子を明らかにする研究が進められています。

全国調査では1982年と1986年の流行をのぞき、1980年代後半から90年代は毎年6,000人ぐらいのこどもがかかっていました。99年に7,000人、2000年には8,000人としだいに増える傾向にあります。1歳をピークとして、主に4歳以下の乳幼児がかかり、男子が女子の約1.5倍です。冠動脈に大きなこぶができる巨大瘤(冠動脈径8ミリ以上)をもつ患者が毎年約0.5%、200人に1人います。川崎病による死亡率は、最近では約0.05%、2,000人に1人となっています。

川崎病は2つの疾患をもっています。急性熱性疾患(急性期)と冠動脈障害を主とした心疾患(後遺症)です。まず急性期について説明しましょう。

急性期の症状は
この病気は特徴的な症状から診断します。次にあげる6つの主な症状のうち、5つ以上がみられた場合と、4つの症状しかなくても冠動脈瘤がみられた場合は川崎病(定型の川崎病)と診断します。症状はそろわないものの、他の病気ではないと判断された場合は「非定型の川崎病」とされています。

主な症状は

5日以上続く発熱(38度以上)

  1. 発疹
  2. 両方の目が赤くなる(両側眼球結膜充血)
  3. 唇が赤くなったり、苺舌がみられる
  4. 病気の初期に手足がはれたり、手のひらや足底が赤くなったりする
    *熱が下がってから、手足の指先から皮膚がむける膜様落屑(まくようらくせつ)がある

⑤片側の首のリンパ節がはれる

主要症状のほかに
BCG接種部位が赤くなっている、関節の痛み、下痢、腹部膨満などがあります。
全身の血管炎のため、その他のいろいろな症状が出ることがあります。
小児期に急に発熱する他の病気に比べ重症で、日ごろ元気だった子が急にぐったりしてしまいます。
これらの症状は同時に出るわけではありません。それぞれの症状の程度もかなり個人差があります。このため診断のむずかしいことが少なくないのです。

血液検査では
白血球・CRP(炎症反応)・肝細胞逸脱酵素が上昇し、ナトリウム、アルブミンが低下し、回復期に血小板が上昇します。

急性期はふつう1~2週間で回復しますが、症状の強い場合は1か月以上続くこともあります。ごくまれですが敗血症のようになったり、心臓の筋肉に炎症がおきる心筋炎のため心不全となり、死にいたる場合もありますからあなどれません。

この病気の特徴は、急性期の1、2週間を過ぎた後に、心臓に栄養を与えている冠動脈に瘤ができる場合があることです。炎症が大変強い時は、わきの下や足の付け根の血管に瘤ができることもあります。

治療は?
◇急性期の治療
急性期の炎症が強かったり発熱が10日以上続いたりすると、冠動脈瘤ができやすくなるので、少しでも早く炎症をおさえる治療が必要です。

1977年ごろから、アスピリンなど抗炎症作用をもつ薬が使用されるようになりました。当時は急性期の冠動脈拡大が約40%、1年後の冠動脈障害が約10%でした。
1982年から免疫グロブリン大量療法が行われるようになりました。免疫グロブリン製剤は、献血された人の血液からガンマグロブリンというたんぱくを取り出したものです。この中には細菌やウイルスが体に侵入してきた時、感染を防ぐ抗体が含まれています。

この治療法が広く行われるようになり、急性期の冠動脈拡大は約20%、1か月後の冠動脈障害は約7%に減りました。

1980年ごろから川崎病が広く知られるようになり、早期診断、的確な治療によって冠動脈瘤がみられるお子さんは減ってきました。しかし、問題は早期に免疫グロブリン製剤を投与しても効果がなく、炎症が続き、巨大瘤(冠動脈径8ミリ以上)ができてしまうお子さんがいることです。

記事監修

日本小児科学会認定小児科専門医
すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)