10代の子どもが感じる親の愛が親子間の衝突の影響を和らげる
2020/08/26
子どもが10代ともなれば、親との衝突を避けられないときも出てくる。しかし、親が子どもに思いやりを見せることで、その衝突がもたらす影響を和らげることができるとする研究結果を、米イェール大学が発表した。
この研究で対象となったのは、151家族の親と子。子どもは13〜16歳で61.6%が女児であり、親は95%が女性であった。これらの親と子はそれぞれ、21日間にわたって日記を記録したほか、研究開始時に親子間の親密度に関する調査も受けた。
これらを基に、親が見せた思いやりおよび親子間の衝突と、子どもが感じる親の愛情の程度に関する日々の変動との関係を分析した。
その結果、親子の関係の親密度にかかわりなく、親が子どもに対して、愛情、理解、称賛の形で、より多くの思いやりを示したと報告した日には、子どもは親からたくさん愛されていると感じたことを報告していた。逆に、親が通常よりも子どもとの衝突が多かったことを報告した日には、子どもは親にあまり愛されていないと報告していた。
さらに、親が子どもへの思いやりを示すことで、親子間の衝突がもたらす影響を軽減できることも判明した。つまり、親が子どもに思いやりを見せれば、激しい衝突が生じても、子どもが感じる親の愛情が減じることはないということだ。ただし、こうした効果は、衝突と思いやりが互いに関連する必要はないものの、衝突が生じたその日のうちに親が思いやりを示さなければ得られないという。
「親はしばしば、子どもとの衝突を気に病む。しかし、われわれの研究から示唆されたのは、たとえ衝突が生じても、その日のうちに子どもが親の思いやりを感じとることができていれば、親子間の衝突は対処可能なものだということだ」と結論付けている。
研究チームは、今回の研究結果は、人が誰かから愛されていると感じる程度は、たとえ長期的な関係であっても日々変動するという、目下増えつつあるエビデンスに加わるものだとしている。
そして、「親と10代の子どもがどのようにコミュニケーションをとり、衝突を解決するかは、健全な親子関係を長期的に維持していく上での最重要課題である可能性がある」と付け加えている。
また、研究チームによると、子どもとの衝突の回避は、よりネガティブな影響をもたらす可能性があるという。
この研究で得られた知見は、今の状況下では、特に有用だ。なぜなら、多くの親と子が、限られたスペースの中で、新たなストレスを抱えながら、非常に多くの時間を一緒に過ごしているからだ。子どもにやさしく思いやりを持って接する方法を見つけることで、潜在的な衝突を緩和し、子どもたちに“自分は親に愛されている”と実感させることができるだろう
記事監修
- 日本小児科学会認定小児科専門医
- すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)
Related Posts