ジフテリアについて
2020/08/26
ジフテリア菌の感染によってヒトのみに生じる上気道の疾患で、鼻ジフテリア、咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリアなどの病型があります。日本におけるジフテリア患者の届出数は、1945 年には約8万6 千人(うち約10%が死亡)でしたが、ワクチン接種普及と共に減少し、1991-2000 年の10年間では、21人の届け出(うち死亡が2人)でした1)。しかし、現在でも国内で散発的に報告があります。世界的にも予防可能な疾患として扱われ、世界保健機関(WHO) ではワクチン接種(日本ではDPT-IPV、DTワクチンおよびDPTワクチン)を奨励しています。
感染経路:飛沫感染(皮膚に炎症を生じた場合は接触感染もあります)
潜伏期:2-7日(より長期のこともある)
周囲に感染させうる期間:無治療の場合は2-6週間、適正な治療を受けた場合は48時間以内
学校保健安全法 第一種感染症
感染症法:2類感染症(全数報告:直ちに届出)
感染力(R0)6-7
※1 R0:基本再生産数:集団にいる全ての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表します。つまり、数が多い方が感染力が強いということになります。
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主な症状は
微熱、咽頭痛、頭痛、倦怠感、嚥下痛などの症状から始まります。進行すると、続いて鼻づまり、鼻出血、声がれなどが生じます。
しかし、無治療の場合は急速に悪化し、死亡率は平均5-10%です)。
合併症としては、上気道閉塞、心筋炎、脳神経・末梢神経障害をきたすことがあります。重症化すると、呼吸困難、心不全、呼吸筋麻痺などにより死亡する可能性があります。
診断方法は
確定診断のためには、粘膜を採取し特殊な培地で菌を増殖させてから分離させ、さらに専門の施設で検査する必要があります。ワクチン接種を十分に受けていない人が上記の症状を来たしていれば、確定診断を行う前に、ジフテリアを疑い臨床診断として治療を開始しなければいけません。
治療法は
抗毒素(こうどくそ)投与、抗菌薬投与の両者が必要です。抗毒素投与は、臨床的に下す診断を元に可能な限り早期に、培養結果が出るよりも早くウマ抗毒素を経静脈的に投与します。
予防法は
ワクチン接種しか予防法はありません。
日本ではDPT-IPV(4種混合)ワクチンとDT(2種混合)ワクチン、DPT(3種混合)がジフテリア含有ワクチンに相当します。DPT-IPVとDTワクチンは定期接種で乳幼児、学童に接種が必要です。
記事監修
- 日本小児科学会認定小児科専門医
- すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)
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