ロタウイルス胃腸炎について
2020/08/26
ロタウイルスが原因によっておこる胃腸炎です。
ロタウイルス感染症の流行時期は初冬から早春に多い。
流行は年末あたりから始まり、春先にピークとなる。ノロウイルスよりも流行のピークは遅い。
【ポイント】
ロタウイルスは環境中でも長く生存し、感染力が非常に強い。
通常は1-2週で自然治癒するが、重度の脱水を起こすことがある。
遺伝子型が違っても交叉免疫が働くため、感染を繰り返すことで免疫が高まり、成人を含めた年長児では不顕性感染となる。
その特徴を踏まえて、現在の弱毒生ワクチンが開発された。
ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児の急性重症胃腸炎の主な原因のひとつです。また脳炎・脳症の原因となることもあります。ロタウイルスは感染力が非常に強く、ほとんどの子どもが5歳までに感染すると言われ、例年冬から春にかけて流行します。くり返し感染することがありますが、とくに初めて感染したときに症状が強くあらわれ、乳幼児では激しい嘔吐や下痢により脱水になるなど重症化することがあります。脱水や重症化の程度によっては点滴や入院が必要になることがあります。
ロタウイルスは感染を繰り返すことごとに症状は軽くなっていきます。ロタウイルスに感染している子どもと接触した大人のうち30-50%が感染すると言われていますが¹、大人はそれ以前の感染の影響により、多くの場合は軽症か症状があらわれません。
わが国では、就学前の子どもの約半数がロタウイルス感染症で小児科外来を受診し、年間の患者数は80万人程といわれています。
また、およそ2-8万人が入院(多くは2歳以下)していると推計され、ロタウイルス胃腸炎による死亡は毎年2-18名が報告されています²。
一方、医療機関が整備されていない発展途上国では死亡例が多く、世界ではおよそ45万人の子どもがロタウイルス胃腸炎によって死亡していると推計されています³。
感染経路:経口(糞口)感染
潜伏期間:1-3日
周囲に感染させうる期間:4-5日程度(下痢が出現してから数週間、便中にロタウイルスが排出されることもあります)
学校保健安全法:その他の感染症(下痢や嘔吐症状が軽減した後、全身状態が良いひとは登校(園)可能ですが、回復者であっても排便後の始末、手洗いの徹底は重要です)
感染症法:5類感染症
主な症状は
ロタウイルスに感染すると、1-3日の潜伏期間の後、通常は発熱と嘔吐から症状が始まり、その24-48時間後から水のような下痢(便は白っぽくなることがあります)がくり返し出るようになります。腹痛、腹部の不快感などもみられます。下痢や嘔吐が続くことで脱水症状が数日間続くことがあります。
通常、胃腸症状は数日から1週間ほどで改善しますが、とくに初めての感染では重症化することがあります。重症化すると血圧低下、脳症、けいれん、急性腎不全などをひきおこすことがあり、命に関わる場合もあります。ぼーっとする、呼びかけてもすぐに眠ってしまうなど意識の低下やけいれん、ぐったりしているなどの症状が見られたら、すぐに近くの医療機関を受診してください。
診断方法は
通常、患者の症状や周囲の感染状況などをから医師が総合的に判断して、ロタウイルスが原因であると推定して診療を行ないます。しかし症状だけでは確定診断ができないため、診断の補助として医師が必要と認めた場合には患者の便を用いた迅速診断検査を行うことがあります。
治療法は
現時点ではロタウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、下痢、嘔吐、脱水、発熱に対する対症療法を行ないます。脱水を防ぐための水分補給として経口補液や点滴などが治療の中心になります。重症化した場合は入院が必要となります。
予防法は
感染を拡大させないためには、オムツの適切な処理(使い捨てのゴム手袋などを使い、捨てる場合はポリ袋などに入れる)、手洗いの徹底、吐物や便で汚れた衣類の次亜塩素酸消毒などによる処置が必要です。しかし、ロタウイルスの感染力は非常に強いため、これらの対策をとっても感染を完全に予防するのは困難です。
そのため、乳児へのロタウイルスワクチンによるロタウイルス胃腸炎の重症化や合併症の予防が大切です。わが国では2種類のロタウイルスワクチンが承認されています。なお、世界保健機関(WHO)は、このワクチンの定期接種を推奨しています。
記事監修
- 日本小児科学会認定小児科専門医
- すずきこどもクリニック
鈴木幹啓(すずきみきひろ)
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